考察編、準備編に続いていよいよ実験に入ります。一体何の実験をするかというと色々な潤滑剤の潤滑性能の可視化です。その下準備のため先回はグリスのちょう度調整を行いました。
先回までの分はこちら↓
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まえがき
今回の実験にあたりいくつか潤滑剤を用意しました。潤滑油2種類、グリス2種類、あとは固形潤滑剤です。実験自体は自転車のハブで行うことにしました。
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被験体はこちら、ASHURAのリアハブを使います。ベアリングの玉がバラけないリテーナー付きなのでやりやすいかなというところです。
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ペグとアクスル固定ナットを外します。
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チェーンを外したらもう一回ペグ無しで固定。この状態でホイールを思いっきり手で回して空転時間を測定していきます。条件を揃えるため玉押しは調整せず優しく手で締めて止まるところまでに統一。アクスルの固定も同様に。潤滑剤を塗布する箇所もベアリングのみに留めます。
実験に入る前の状態で空転時間を測定したところ15秒39でした。
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以前メンテしたときに使ったグリスはたしか極圧剤入りのウレアグリス。
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若干、どころかだいぶ変色しているような。。メンテ時に落としきれなかった汚れが残っていたのか数回乗っただけでこれだけ汚れたのかは不明ですがひとまずグリスや汚れをパーツクリーナーにて落としていきます。
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これで実験の準備が整いました。
潤滑油をリアハブに
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用意した潤滑油はこの2種類。CRC6-66とエンジンオイルです。まずは6-66から。
実験① CRC6-66
ベアリングにシューっと吹きかけ組み付けてやりました。
1回目:16秒30
2回目:16秒22
3回目:17秒22
測定開始、終了のタイミングの誤差や空転させる力加減のバラつきもありますが大体同じようなタイムとなりました。2回目と3回目の間をとって16秒72としておきます。
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実験後、6-66はティッシュを湿らす程度は残ってました。
実験②エンジンオイル
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続いてはエンジンオイルです。以前使った残りが100mlくらいあったので有効に使ってやります。
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6-66のようにスプレー出来ないため器に出して浸してやります。
1回目:18秒46
2回目:19秒28
3回目:18秒71
6-66よりも好タイムを記録。1回目と2回目の間を取って平均は18秒87とします。
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6-66と比べるとべったりと残ってます。さすがのエンジンオイル、この粘度によってエンジン内を保護潤滑しているのでしょう。6-66、エンジンオイルともに極圧ウレアグリスよりも好タイムを記録しましたが玉押し調整の違いがあるので一概にこれらの方が潤滑性能が上とは言い難いです。
グリスをリアハブに
続いてはグリスをリアハブに塗布して実験します。先回調合したウレアグリス+添加剤10%と40%の特製ウレアグリスを使用します。シマノのプレミアムグリスも試そうと思っていたのですがすっかり忘れていました。
実験③ウレアグリス添加剤10%
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添加剤を混ぜたことによって元々の2号よりも少し軟らかくなっているはず。
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潤滑油の時と同様にベアリングのみに塗布していきます。
1回目:15秒49
2回目:16秒51
3回目:16秒67
1回目と3回目の間を取って平均16秒08。辛うじて極圧ウレアグリス2号よりは長く空転しました。玉押しの条件が揃っていなかったことが悔やまれます。
実験④ウレアグリス添加剤40%
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続いては添加剤40%配合の特製ウレアグリスの出番です。自分的にはこちらが1番好タイムを残してくれるんじゃないかと期待してます。
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1回目:17秒46
2回目:17秒36
3回目:17秒43
1回目と2回目の間を取って平均17秒41。添加剤10%よりは好タイムですが思っていたよりも変化はありませんでした。指で触れた限りでは明らかに軟らかくなっていたのですが期待はずれです。
添加剤10%も40%も共に極圧ウレアグリス2号よりは上でしたがエンジンオイルには敵いませんでした。グリスの性質上、潤滑油よりも抵抗が増しているせいだと思われます。
固体潤滑剤をリアハブに
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毎度お馴染みのAmaz○nで調達。本当はフッ素樹脂コートも試してみたかったのですが金銭的な都合でモリブデンコートのみになりました。
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高荷重下の摺動部に。とあるのでリアハブに使うのにちょうど良さそうです。
実験⑤モリブデンコート
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リテーナーの隙間に詰まったグリスをしっかりと洗浄してやります。綿棒で粗方ほじくりだし水道で流しながら薬用ミューズで洗い、仕上げにパーツクリーナーです。
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最初の1、2秒くらいは溶剤ばかり出てくるのでゴミ箱かなにかに向けて吹いたほうが良さげです。あとは結構飛び散るので室内で使うときはもちろん屋外でも段ボールか何かを敷いて吹いたほうがいいですね。
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今回はベアリングだけでなく玉押しとアクスルにも塗布していきます。
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潤滑油やグリスの場合はベアリングだけに塗布すればイヤでも玉押しやシャフトにも付着しますがコーティングの場合はそれがなさそうなので公平にするためです。
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容器に溜まったコーティング剤を綿棒ですくってシャフトに塗りつけます。ピンポイントに塗りたい時はスプレーするよりもこちらのほうが確実です。10分くらい時間を置いて大体乾いたかな?といった辺りで組み付けてやりました。
1回目:17秒11
2回目:18秒53
3回目:18秒79
1回目と3回目の間を取って平均17秒95。あまり期待はしていなかったのですがエンジンオイルに匹敵する好タイムを記録。となると気になるのはコーティングした上でグリスを塗ったらどうなるのか。
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コーティングは剥がれずちゃんと残ってました。10分程度乾かしただけでも意外としっかりコーティングされていたようです。
実験⑥モリブデンコート+ウレアグリス添加剤40%
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再び40%の出番です。コーティングしてこのグリスを塗ったら果たしてどうなるのか。
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その前にもう一度コーティング剤を重ね塗りしてやります。
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実験⑤の時よりもがっつりコーティングされました。
1回目:20秒95
2回目:21秒88
3回目:21秒47
コーティングのみ、グリスのみの時と比べだいぶタイムが伸びました。厚塗りが効いたのかグリスのおかげなのかは定かではありませんが。1回目と2回目の間を取り平均は21秒41。エンジンオイルより好記録です。コーティング+エンジンオイルも気になるところですが実験してる時にはやろうとすら思ってなかったので…潤滑性能だけで考えたらエンジンオイル+コーティングが1番良さそうですが果たして。
おまけ①ワセリン
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どうせ実験するなら潤滑剤以外も、ということでワセリンも試してみました。金属の防錆に使われることはあるそうですが潤滑性能はどうなのか気になるところです。
1回目:18秒39
2回目:19秒06
3回目:18秒77
想像していた以上に好タイムを記録しました。1回目と2回目の間を取り平均18秒72。ウレアグリス添加剤40%、モリブデンコート単体以上の潤滑力です。しかも保湿効果も期待できます。しかし融点が低く人肌程度で溶け出すので走行時にハブ付近が高温になるのならば流出してしまう恐れが…
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数回手で回した程度では問題なさそうですが。また機会があればワセリンについて研究したいと思います。ちなみにワセリン塗布実験はモリブデンコートの前にやっております。
おまけ②
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フッ素樹脂コート剤ではなくフッ素配合の歯磨き粉をうっかり買ってしまいました。全く期待はしていないのですが万が一のことがあるので。
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高濃度フッ素、1450ppmも配合されています。この文言を見る限りでは少し期待できそうですが…
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グリスと同様に塗りたくります。クールミントの清涼感溢れる爽やかな香りでリフレッシュ出来ました。
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玉押しもフッ素漬けです。
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手袋もフッ素漬けになりました。細かな溝に入り込んでしまって取れません。
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この画像を見る限りではシリコングリスのようにも見えますが歯磨き粉です。気になる結果の方ですが。
1回目:13秒28
2回目:13秒32
3回目:13秒65
平均を計算する気にもなりません。ある意味期待通りのタイムです。もしかしたら塗りすぎてしまったせいでタイムが伸びなかった可能性もありますが薄く塗っていても大差はないでしょう。清涼感でリフレッシュ出来ただけで全くもって時間の無駄でした。
実験結果
- 21秒41 モリブデンコート+ウレアグリス(添加剤40%)
- 18秒87 エンジンオイル
- 18秒72 ワセリン
- 17秒95 モリブデンコートのみ
- 17秒41 ウレアグリス(添加剤40%)
- 16秒72 CRC6-66
- 16秒08 ウレアグリス(添加剤10%)
- 15秒39 極圧ウレアグリス(ちょう度2号)
- 13秒ちょい 歯磨き粉
実験結果をまとめました。予想していた通りグリスよりもオイルの方が潤滑性能は上のようですがハブに使用するには少々心許ないです。毎走行ごとに点検するならばもしかしたらイケるかもしれませんがとてもじゃないけどそんなことしたくありません。
この結果を受けてというか元からそうしようと考えていましたが、モリブデンコート+ウレアグリス(添加剤40%)でもってASHURAのリアハブを組付けていきます。というよりもう既にコーティング済なのでそれ以外どうしようもないです。
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今度は玉押しも調整してからの組付けになります。調整後、少し締めすぎたかなと思いつつもタイムを計測。
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やはり締めすぎたっぽいです。回すとコリコリどころかゴリゴリとした感触が伝わってきます。
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しかし時間はもう夜中の3時。再度調整する元気はもはや無く、風呂に入って寝ることにしました。
あとがき
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しかしこのままでは後味が悪すぎるので翌日またホイールを取り外して再び玉押し調整。ハブがガタつかないギリギリのところを狙います。コリコリと柔らかな感触が伝わってくる締め具合で組付けました。ハブにガタはありません。満を持してタイムを計測。
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実験時と同等のタイムを叩き出しました。施工前は15秒39だったので6秒以上も空転時間が伸びています。当社比で1.4倍、もう一息でスーパーカップです。モリブデンコート+ワセリンならもしかしたら…!
あとは耐久性が気になるところですがASHURAでは長時間走行が苦痛以外の何物でもないので別の車両で検証した方が良さそうです。モリブデンコーティングの有用性が今回の実験で分かったのでシグナスやVENTURAにも施工してやりたいと思います。
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